あの日、声が出なくなるくらい泣いた。
遠くに夏の音がしていて、いつものことなのに何だか悲しかった。
たぶん初めて、話をしていた。
いままで考えたこと、作り上げたこと、ずっと言えなかったこと。
手も握らなかった。
腕の感触も、記憶の中では頼りにならないだろう。
いつも見てくれていたのだね。
思い出すのはその言葉と、初めてのプレゼント。
夜空に浮かぶのは、小さなシャボン玉。
手を伸ばしても届かなかった、希望とか期待とかそんな何か。
それがすぐ手に入る。
あの日に見送った透明のまんまる。
同じじゃないことはわかっているけど、とってもそっくりな、あの日の何か。