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ルルのエッセイ


by rurucafe

うまくは言えません

あれ、気づかぬうちに年があけてもう一週間以上経っていました。
こちらでは明けましておめでとうございます。

ここ数日、とっても考えることが多いです。
こういう風にどうしても深刻になってしまうときっていうのは、何かしら暗いニュースが続いていたりするものです。

言葉にするのがすごく難しいのですが、ちょっと書きます。

つい先日、とある番組で、海外の監督から観た東京を映し出すといった特集をやってまして、たまたま途中から観ました。

画面には歳の離れたカップルが出ていて、カメラの前で日常生活を送っています。
女性のほうが若くて、男性は女性のお父さんと同い年だそう。男性はバブル崩壊により転落人生を歩むことになった1人らしく、今は郵便局でアルバイトをしている身。
身よりがなく、今付き合ってる女性に捨てられたらまさに何もかも失う身。
女性は精神的に不安定。
2人は身を寄せあうように同棲生活をしています。

その生活を男性は、「She is my life」と言うのです。彼女が全て。それはそのまま生活に直結しているのです。

男性は、学生運動経験者なのか、昔は結構攻撃的だったみたいだけれど、今は生活のためか、女性のためか、上司に何言われても「はい」と返事するしがないアルバイトの身。それをカメラをまわしているイギリス人監督に自嘲気味に言うのです。
「ヒゲそれよと言われ、本当ならほっとけよといいたいんだけど、こらえて"はい"と言った」と笑う。

イギリス人監督は、彼の職場にも潜入します。
朝礼。大きな輪になって、今日はこういうことに気をつけましょう・・・とまるでお経をあげるみたいにつぶやく上司。聞いてる人はみんなおんなじような目つきで、微動だにしない。
そして、それが終わると輪が小さくなり、小さな朝礼が始まる。みんなただ聞いているだけで、とくに意味があるとは思えない光景。
でも、こういうのは実に日常的な風景なんだけど、自分も似たような光景に出会っているし、その中に入り込んでいるけれど、ふと外からそれを見せられると何か変だな、日本・・・と思う。

イギリス人監督は言う。
日本という国は、世界で最も平等な国だと言われてきたが、今は貧富の差が広がり始めている。そして、身を寄せ合う2人に視線を向ける。

彼の目には哀しい日本が写っている。そんなふうに思いました。悲しみを知っている人は、哀しい色が目の中に宿っている。その視線の先には何があるのか。

イギリス人監督と、器用に英語でやりとりする男性には教養があるように見えたのだけれど、下手に頭が良くて我を通すと、煙たがられる。彼にとってはもうプライドはつまらないものになっているように思えました。

男性は、ずっと避けてきた彼女のお父さんと会う決意を固めます。2人の関係が悪化するたびに、問題の1つとなってきたこと。彼女との関係を続けるために、超えなくてはならないこと。
和やかに話す3人の画はそれでもゴールではないことを感じさせたし、それでも進むしかない毎日がひしひしと2人の中には宿っているように思えました。
これが、日本なのか。

彼は言います。Love is war。愛は戦争なんだ。どっちかが勝者でどっちかが犠牲者。愛に平和はない。でもボクは平和でいたい。
勝者と犠牲者。
愛だけじゃない、今の世の中。勝ち負けが大事。

そしてそれを煽るもの、不必要に騒ぐもの。深刻に取り上げるもの、ぎゃんぎゃん騒ぐもの。

どっかおかしい、おかしいことになっている。
何か不景気という名前に隠れて、何かがどんより崩れているような気がしています。
by rurucafe | 2009-01-08 23:14 | エッセイ